| 演 目 椅 子 観劇日時/08.7.6. 劇団名/TPS 公演回数/tps小文字で大作シリーズ 作/イヨネスコ 翻訳/安堂信也 演出/斎藤歩 演出助手/弦巻啓太 制作/横山勝俊 舞台監督/佐藤健一 舞台監督助手/岡本朋謙 舞台スタッフ/深澤愛・伊佐治友美子・高子未来 デイレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二 出演/老人=佐藤健一・老婆=林千賀子・弁士=斎藤歩 劇場名/シアターZOO |
| 『椅子』についてのアーカイブス 椅子が増殖するというモチーフの芝居を過去に二つ観ている。もちろんこの『椅子』が下敷きとなっている。 第一は98年6月に東京・下北沢の新しい「劇・小劇場」で観た、スティーブン・ディーツ=作、松本修=演出の『孤独な惑星』である。登場人物は男二人で、余談だがこのとき初めて斎藤歩を観ている。それはずっと後になって、あの斎藤さんだと知ったのだが……共演は小嶋尚樹であった。 地図屋に友人が持ち込むたくさんの椅子が舞台を埋め尽くしていくのが一つの見所になっている。『観劇片々・第3号』(99年1月発行)所載。 そのとき調べたのだが、『椅子』についてイヨネスコ本人は「あれは物の増殖を表現しているのです。事物が過剰に存在することは、精神の不在を示すものです。(白水社―イヨネスコ全集)」と言っている。 二つ目は同じく98年12月、東京・新宿「紀伊國屋ホール」で上演された竹内銃一郎=作・演出の『今は昔、栄養映画館』である。これはパンフレットに「イヨネスコ『椅子』より」と断っている。 これは、映画の試写会に次々に現れる観客のために椅子を出すのだが、それが舞台一杯に溢れるように続くのだ。 怪しい映画監督(=すまけい)と、シナリオ作家で出演者でもある男(=木場勝巳)。期待を込めてしかし現実には厳しい観客の来場を待つ虚しさみたいな芝居であったような記憶がある。『観劇片々・第4号』(99年7月発行)所載。 さて今日の『椅子』は開幕前、客入れ音楽に代わって潮騒の音が舞台奥から聞こえてくる。舞台の三面には垂木を2bほどの様々な長さに切って垂らして壁を暗示し、左右の両側には窓らしい開口部がある。 此処は離れ小島の年老いた夫婦(夫=佐藤健一・妻=林千賀子)の蟄居するささやかな家らしい。夫は長年にわたって守衛を勤めたが、人生を全うしていない焦慮に苛まれているらしい。 妻はそんな夫を慰める。夫は今日、たくさんの客を集めて弁士を雇用し、世界に対する革命的な自説を発表する計画を実践しようとしている。 やがて船に乗って客が入って来る。貴婦人や軍人、その配偶者たちが次々にやって来る。妻は夫に命じられて、次々に椅子を用意するためにてんてこ舞いをする。 次第に客の来訪は数を増し、二人は走り回る。だが客は透明人間であり、椅子は乳幼児用みたいな小さな玩具のような椅子である。やがて弁士(=斎藤歩)が来るが、疲れ果てた二人は、窓から海に飛び込んでしまう。一人残った弁士はどうやら聾唖者であるらしい。バッグから何かを書いた紙を出して見せ、そのまま帰っていく。 無人の舞台をしばらく見せてゆっくりと溶暗すると、潮騒が何事もなかったように聞こえてくるのだった。 この舞台は夫が主導権を握っているはずだが、この配役では妻の方の印象が強く、夫が引っ張られているような感じであった。 |