演目 弦崎東総合病院
観劇日時/11.7.9.〜10.
上演形態/シアターZOO演劇祭 ズーイレブン
プロデューサー/弦巻啓太 照明/相馬寛之 
美術/FUKUDA舞台 チラシデザイン/小島美紀
宣伝イラスト/福原明子 
制作/シアターZOO演劇祭ZOO11実行委員会
   シアターZOO代表幹事=平田修二・笠島麻衣
劇場名/シアターZOO

 シアターZOO演劇祭ZOO11実行委員会の主催により、弦巻啓太プロデュー
サーの企画・構成による6劇団が10日間に亘って上演された演劇祭。
 舞台を、今年は病院の一室という限定で創った。いつも思うのだが、舞台装
置を限定すると発想がし易いという利点がある一方、なぜそこが舞台になって
いるのかが良く分からないという欠点も目につく。
 以下、参加した6演目について個々を紹介する。

演目1 お銀錯乱!! お銀十番勝負第二番 
劇団名/亀吉社中
作・演出/村上孝弘
出演/井川しま・茅原一岳・田村貴大・藤原加奈・松本竜輝
前半と後半との違和感
 やくざの抗争中、突然にヘリコプターが墜落、二組の姉御と、それぞれの三
下が目覚めたのは病院の整形外科病室だった。
 だがここは何故か密室であり、春祭りの出来事であったはずなのに、窓外は
雪景色であった。
 奇妙な、誰かの夢の中に生きているような状況……面白い設定なのだが、リ
アルなやくざの世界と抽象概念との接合がうまくいっていないから水に油の物
語に見える。
 つまり、前半のナンスンスな運びが不徹底で、可笑しみが中途半端で退屈す
る上に、後半の観念性と繋がらない。
 後半に面白い素材を扱いながら、規定路線のお銀に拘ったために、どっち着
かずになってしまい残念な結果になったようだ。

演目2 可愛そうなアノコ  
劇団名/TBGS
作・演出/ミヤザキカツヒサ
出演/原田充子・潮見太郎・寺地ユイ・小林由香・高橋未知
壊れた人たち
 病院の看護師の夫がリストラに逢う。怠け者の夫は、何かにかこつけては病
院に会いに来る。彼女からみるとまじめに就職運動をしているようには思えな
い。甘えているだけだ。
 後輩の看護師、婦長との三人組のちょっと不思議な関係は軽快で魅力的。だ
が実は婦長は、植物人間になった患者と看護師との秘密売春を、入院患者たち
に斡旋していたのだ。
 そして、新婚の妻から遠ざけられていた怠け者の夫も、その植物人間を可愛
い少女として純愛の妄想の相手にしていたのであった……このラストの追い詰
められた夫の狂気が一瞬、緊張を感じさせたのだったが……

演目3 緑に息吹き眼に鱗
 
劇団名/劇団アトリエ
作・演出/小佐部明広 演出補/小山佳祐・桑谷麻理菜
舞台監督/渡辺康平 衣装/谷内望実 小道具/本田宗一郎
音響/野華奈江 制作/桑谷麻理菜
ダメ人間たちの交錯
 二人のOL(=柴田知佳・小池瑠莉)が同室に入院している。彼女らを見舞
う先輩(=有田哲)、同僚(=江崎未来)、彼氏(=小佐部明広)、婚約者
(=伊達昌俊)、偶然に出会った同級生の弁護士(=小山佳祐)、そして看護
師(=信山E紘希)たちの入り乱れる複雑な男女関係。
 二股掛けられたことを知った女が、偶然会った同級生にそのころ美術にあこ
がれを持っていたことを思い出され、折しも西の空の美しさを二人で眺め、彼
女は仄かな気持ちを告白すると彼には妻がいた。
 典型的なシチュエーション・コメディの終わり方、面白く表現できてはいる
が、それがどうした? という舞台だ。 
 そしてもう一つ言うと、TBGS『可愛そうなアノコ』にとてもよく似てい
て混乱した。

演目4 いつか、ひとやすみ 
劇団名/エンプロ
作・演出/遠藤雷太
制作/長原桂・大原達也 音楽/ラバ 音響操作/大沼理子
宣伝美術/戸田ちかこ
シチュエーション・コメディ
 急性胃炎でこの病院に緊急入院した、この病院の管理栄養士・皐月(=長麻
美)と、その夫の看護師・久米(=梅津学)。
 皐月と不倫の関係にあって、同じ原因で緊急入院した保健所職員・誠人(=
小松悟)、皐月と同室の可奈(=長原桂)は石上医師(=三島祐樹)の元妻で
ある。
 誠人の妻・亜子(=阿部祐子)、それらを調査している探偵・須藤(=塚本
雄介)、皐月・誠人の中毒の原因を作った鮮魚店の遊太(=楽太郎)、それら
に絡む看護師・片岡(=後藤貴子)。
 彼ら、彼女らがヒッチャカメッチャカに繰り広げる恋愛大騒動。だが設定に
無理があるのが気になる。
 たとえば嘘を吐く必要の無いときに無理に嘘を吐くとか、無理な行き違いを
するとか、設定の為の設定を強行している感じが大きいのだ。
 本当のシチュエーション・コメディとは、自然な成り行きで止むに止まれず
嘘を吐いたり、行き違いになってしまったりするから面白いのだ。
 それをカバーするべく、ともすればオーバーアクションで話を大きく見せか
ける。だがテンポが良く、オーバーアクション部分以外はリアリティのある演
技が一瞬、設定の無理を忘れさせる。
 無理な大騒動は、きっといつかは休みたくなるであろうという皮肉か?

演目5 したいこと。
劇団名/セブンスロバ
作・演出/小林琴枝
出演/永田雅美・橋本久美子・荻田美晴・勝見詞穂
   斉藤玲史・濱道俊介
裏付けの薄いシチュエーションコメディ
 死を宣告された人の物語という話の流れが、宣告しにきたはずの死神の早と
ちりというか、姉の妹に対する心遣いから巻き起こる騒動に話の主体が移って、
肝心の死を宣告された人はいったい姉なのか妹なのか、そして肝心のその心情
がほとんどわからない。
 ずいぶん昔に別れた血の繋がらない姉妹が再会する話はそれなりに面白そう
なのだが、深まらないうちに唐突に芝居は終わる。
 結局、本当に死を宣告されたのはいったい誰なのか?混乱して収拾がつかな
くなったような話。
 姉妹の対照的な性格の描き分けが、期待出来そうだったのに中途半端に終わ
ってしまったのは残念。

演目6 枕のしたのしたの
 
劇団名/Drei bananen
作/かとうしゅうや 演出/彦素由幸
男の存在証明
 泌尿器科に入院している男・吉本(=かとうしゅうや)は、2年前に妻に先
立たれてからの勃起不全だ。主治医(=重堂元樹)は完治したというのだが、
吉本はなぜかノラリクラリと病室での毎日だ。
 そこへやはり勃起不全の若者(=彦素由幸)が治療に訪れる。彼は童貞で、
彼女の前では勃起しない。
 3人はそれぞれに自分の美学を持っているようだ。それを正直に表現するわ
けではない。猥談すれすれの病状告白や実体験告白などが続く。
 一見、卑猥な台詞の物語でありながら、実はその内部には深く広い含意が大
きい。それは生き方の問題であろうか?そういう意味では、この演劇祭の中で
は唯一の重い主題をもった、短編ながら力作であった。

     ☆  6本を通して観て、ほとんどが似たようなシユチュエーションコメディだっ たのは工夫が無さすぎる。しかも無理な設定と、作られた行き違いが興を削ぐ のだ。  それと病室という枠組を、病室という特殊性として使っていないのも気にな る。確かに低出費でそれらしい舞台装置を造られるというのは利点には違いな いのだが……